映画『1917 命をかけた伝令』評論!ワンカット編集の圧倒的な臨場感と緊迫感!

映画『1917 命をかけた伝令』評論

映画『1917 命をかけた伝令』の10点満点評価

★★★★★★★(7点)

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ワンカット編集による戦場を駆け抜ける臨場感が凄まじく、瞬きする隙すらないほど緊張感が続く超正統派の戦争映画です。

映画『1917 命をかけた伝令』公式予告動画、およびストーリー概要

1917年4月6日、ヨーロッパは第一次世界大戦の真っ只中にあった。
その頃、西部戦線にいたドイツ軍は後退していた。

しかし、その後退はアルベリッヒ作戦に基づく戦略的なものであり、連合国をヒンデンブルク線にまで誘引しようとしたのであった。
イギリス軍はその事実を航空偵察によって把握した。

エリンモア将軍は2人の若い将兵(トムとウィリアム)を呼び出し、「このままでは進撃中のデヴォンシャー連隊が壊滅的な被害を受ける。しかし、彼らに情報を伝えるための電話線は切れてしまった。そこで君たち2人は現地へ行って連隊に情報を伝えろ」と命じた。

デヴォンシャー連隊には1,600名もの将兵が所属しており、その中にはトムの兄・ジョセフもいた。

トムとウィルは味方を救うため、決死の覚悟で無人地帯へと飛び込むのだった。

映画『1917 命をかけた伝令』公式ホームページより引用

映画『1917 命をかけた伝令』のポイント

良かった点

  • 全編ワンカット編集の地続き感に伴う臨場感、緊迫感が凄まじい
  • 1歩先に「死」が口を開けて待っている恐怖感が堪能できる
  • 緑々しい自然の美しさと、戦場の地獄感のギャップによるコントラスト美に酔いしれる

気になった点

  • 物語としては「非常にシンプル」なので、ストーリーや脚本を楽しむ映画ファンには少し物足りなく感じる
  • 日本では「全編ワンカット」を推した宣伝をしているので、「暗転シーン」で軽い喪失感を覚える
  • 超リアルな戦争映画ゆえに気になるシーンもある

映画『1917 命をかけた伝令』の感想

本作『1917 命をかけた伝令』は、米アカデミー作品賞候補となり、「撮影賞」「録音賞」「視覚効果賞」の3部門を受賞した世界に認められた戦争映画です。

売りは何と言ってもアカデミー賞で「撮影賞」を受賞するに至った「全編ワンカット撮影編集」による主人公たちの視点が途切れることのない地続き感です。

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同じく戦争を取り扱いアカデミー作品賞候補となった『ジョジョラビット』とは正反対の作風で、生々しい戦死体も映し出される「超リアルな戦争映画」です。

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全編ワンカット編集による途切れない緊張感

本作『1917 命をかけた伝令』は、全編ワンカットに見える撮影編集で作られた映画なので、まさに「人生を追体験」しているかのような臨場感が味わえます。

オープニングシーンでは「花々が咲く天国のような高原」で寝そべっている主人公2人「トム」と「ウィリアム」ですが、上官に呼び出され映画開始3分もたたずに「そこが戦場の最前線という地獄」にいることを理解させられます。

『1917 命をかけた伝令』の1シーン

映画『1917 命をかけた伝令』公式ホームページより

ストーリー概要の通り、本作はイギリス軍将兵である「トム」と「ウィリアム」2人が「ドイツ軍の戦略撤退攻撃」による「イギリス軍の仲間であるデヴォンシャー連隊1600人」の壊滅を食い止めるための「攻撃中止の伝令」の届ける物語となります。(デヴォンシャー連隊は状況を俯瞰で理解できてないので、攻撃をしかければ勝利すると勘違いしています)

これだけ聞くと「意外と簡単そうじゃん」と思うかもしれませんが、主人公たちが最初にいる拠点と「デヴォンシャー連隊」の間には、撤退はしたものの「ドイツ軍」の残党兵が残っている可能性が高く、罠も張り巡らされているので、2人だけで伝令を伝えに行くというのは、ハッキリ言って無謀極まりなく「ムリゲーってレベルじゃねーぞ!」という作戦となります。

このあたりは、命令を言い渡す「エリンモア将軍」が地図を用いて丁寧に説明してくれるので、観客側もいかに過酷な指令であるか理解しやすい作りになっています。

『1917 命をかけた伝令』の1シーン

映画『1917 命をかけた伝令』公式ホームページより

「サム・メンデス監督」はもちろん意識していないと思いますが、本作『1917 命をかけた伝令』は、ゲーム「ダークソウル」に非常に近い緊迫感(面白さ)が味わえます。

1歩先に「死」に直結する「何か」が常に口を開けて待っている怖さ、そしてスクリーンを通して腐敗臭が漂ってきそうなほどのおびただしい数の戦死体の山々・・・まさに「戦場という名のリアルな地獄」が感じられます。

「生々しい戦死体」や「まだ熱をおびている炭火」からは、今歩いている場所が「つい先刻まで戦いの最前線(ドイツ軍拠点)」であったことが分かり、さらに「全編ワンカット編集」による地続き感のある映画的撮影アプローチにより、「瞬きする隙も与えられないほど」途切れのない恐怖と緊迫感が襲い掛かり続けます。

『1917 命をかけた伝令』の1シーン

映画『1917 命をかけた伝令』公式ホームページより

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ただでさえ、何がいつ起きるかわからない状況なのに「嫌な予感がする」というセリフが入ると、「悪いことが起こるフラグ」が立ったことを感じて、恐怖が一段と増します。

ちなみに、日本の広告では「全編ワンカット」と大々的に宣伝していますが、実際には「全編ワンカット」に見える工夫を施した撮影編集で映画が作られています。

このため、「完璧な全編ワンカット」を期待して映画を見に行くと、暗転シーンで「あれ?」とひっかかりを感じてしまうかもしれません。

とは言え、圧倒的に映画全体を通して地続き感は強く「全編ワンカット」にちゃんと見える作りになっているので、ご安心下さいというところです。

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かくいう筆者も「完璧な全編ワンカット」を期待して見に行ってしまったので、暗転シーンで妙な喪失感を感じてしまいましたw

このあたりは「誇張しすぎた宣伝」と「実際の映画」のギャップで、本来不必要な減点をされても仕方ないかな~と思える残念なポイントだと思います。

地獄絵図と美しい絵面のコントラスト感

本作『1917 命をかけた伝令』は、とにかく光と影」「天国と地獄」といった対照的なコントラストで、映画全体を美しくしています。

日本でもお馴染みの「桜の花びら」が登場するシーンがありますが、戦場という地獄を見せられた直後ということもあり、改めて「桜ってこんなに美しかったんだ・・・」と思わず息を飲んでしまいます。

また、主人公が敵拠点をかけ抜けるシーンでは、光と影が互いに交錯しあい、観客側からは「昼なのか夜なのか」すら理解できない「光と影が混然一体」となった戦場なのに神々が住む神秘的な空間であるような光景が見せられます。

『1917 命をかけた伝令』の1シーン

映画『1917 命をかけた伝令』公式ホームページより

そして、ある地点まで到着した主人公に聞こえてくるのは、兵士達を鼓舞するために歌われている「I Am A Poor Wayfaring Stranger(彷徨える人)」という本作『1917 命をかけた伝令』のメインテーマソングです。

(古いアメリカの宗教歌だそうです)

兵士による生歌となりますが、この歌が「戦場という地獄の中」で聞こえることもあり「天使の歌声」のような安堵感を与えてくれ、鳥肌が立つような感動を覚えました。

タランティーノ監督やジェームズガン監督、タイカワイティティ監督のようなヒップホップDJ的センスがある既存曲を用いたミュージックビデオのような映像演出にも感動を覚えますが、それとはまったく違う音楽」がいかに素晴らしいか再認識できる名シーンだと思いました。

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この感動はたぶん言葉では伝えられません。映画館でこのシーンを体験して下さい・・・としか言えません。

リアルな戦争映画だからこそ気になるポイント

本作はとにかくリアルな戦争を描いた映画に仕上がっています。

「神のご加護」という名のもとの「運命」と言えば聞こえはいいのですが、リアルだからこそ主人公たちが少し「幸運」過ぎるようには感じてしまいました。

 

ドイツ軍が放つ銃弾や大砲がことごとく当たらず、ただ走ることで逃げきれてしまうシーンが多めになっています。

もちろん、「本当の戦争で戦ったことがないから、そんな風に感じるんだよ。生き死にがかかった場面で弾を当てるってのは難しくて、あれこそリアルだよ」と言われてしまうことは百も承知ですが、サバイバルゲーム経験のある筆者からすると、「あの距離でセミオートライフルなら当てられると思うけどなぁ~」と変なひっかかりは感じてしまいました。

主人公たちの「咄嗟の判断」や「機転による立ち回り」が活きた結果、逃げ切れるシーンに仕立ててくれれば、筆者はより好みだったなーという完全な嗜好の話かもしれません。

 

また、今回の「命をかけた伝令」は一刻の猶予もない急務なので、主人公たちは迷っている暇すら与えられずとにかく急いで伝令を届けようとします。

しかし、途中ドイツ軍が仮拠点としていた村に隠れ住んでいた「民間人」と腰を据えて話し込んでしまいます。

「戦争に巻き込まれる民間人の恐怖」を描き、戦争の悲惨さを伝える意義がある場面であることは認めるのですが、「話してないで、ほら急いでいかないと!」と突っ込んでしまう自分がいました。

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このあたりのバランスは本当に難しくて、観客側の趣味嗜好にも大きく左右されるポイントではありますが、少なくとも筆者は「減点対象」と判定してしまいました。

映画『ジョジョ・ラビット』では、第二次世界大戦におけるドイツ軍側からの視点をポップでユーモア溢れる視点で描いていましたが、本作『1917 命をかけた伝令』は、とにかくリアルで、戦争では「人間」がいかに道具(兵力)として尊厳もなく使い捨てられてきたのか理解できる映画になっています。

また、「全編ワンカット撮影編集」による途切れぬ緊迫感は、ほんとうに圧巻の一言です。

 

「僅かな音」ですら「恐怖」という名の緊張材料になるので、本作『1917 命をかけた伝令』は絶対に映画館の極上音源で観るべき作品だと思います。

筆者個人的には、最新の12chサウンドシステムを搭載した「IMAXレーザー版」での鑑賞が最高だと思いました。

 

2020年米アカデミー賞で作品賞の候補となり、「撮影賞」「録音賞」「視覚効果賞」の3部門を受賞した世界が認める戦争名作映画です。

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是非、映画館で『1917 命をかけた伝令』をご鑑賞下さい!