映画『フォードvsフェラーリ』評論!漢たちのロマンが詰まった超名作!

映画『フォードVSフェラーリ』評論

『フォードVSフェラーリ』の10点満点評価

★★★★★★★★★☆(9点)

仮に車やレース自体に興味がなくても、企業映画としての側面も強いので、自信を持ってオススメできる超名作です!

『フォードVSフェラーリ』公式予告動画、およびストーリー概要

1963年、アメリカの自動車会社フォード・モーターはフェラーリの創業者であるエンツォ・フェラーリに同社の買収を持ちかけた。
交渉は妥結寸前までいったが、スクーデリア・フェラーリ(同社が運営するレーシングチーム)を手放したくないエンツォは土壇場でこれを破談にした。
フォード・モーターのCEO、ヘンリー・フォード2世はその仕打ちに激怒し「是が非でもスクーデリア・フェラーリを打ち負かしてやる」と決意した。

当時、スクーデリア・フェラーリはル・マン24時間レースで4連覇を達成しており、世界最強のチームと言っても過言ではなかった。
その後、フォード・モーターは多額の資金を投入してフォード・GT40を独自に開発し、1964年の大会に出場したが、全車リタイアという無残な結果に終わってしまった。
1965年も同様の結果に終わったが、フォード・モーターはめげず莫大な資金と、アメリカのレース業界を総動員し試行錯誤を続け、
1966年の大会で8台ものマシンを投入し、ついに優勝を勝ち取った。

本作はキャロル・シェルビーとケン・マイルズの視点からその過程を描き出していく。

『フォードVSフェラーリ』ウィキペディアより引用

『フォードVSフェラーリ』のポイント

良かった点

  • どんな逆境でも諦めない『漢たちの挑戦』が超熱い!
  • CG全盛期の時代にクラッシュシーン含めて、本物の車を使っているので迫力が段違い!
  • 車やレース好きでなくても、お堅い企業の中で、尖った問題児たちが起こす奇跡の逆転ストーリーが楽しめる。

気になった点

  • フォード(アメリカ)側からの視点でストーリーが展開していくので、フェラーリ(イタリア)側がヴィランのように見えてしまい、どうしても「アメリカ至上主義」を感じてしまう。
  • 映画としてのエンターテイメント性を高めるために、本質を捻じ曲げない程度ではあるが、史実と違う着色がされている。

『フォードVSフェラーリ』の感想

まず結論から書きますと、この映画は間違いなく将来クラシック映画として語られるレベルの『超名作映画』です。

1966年のル・マン24時間耐久レースにおいて、スポーツカーの絶対王者であったフェラーリを、大衆車を作っていたフォードが打ち勝つ奇跡の実話がベースです。

若干のネタバレがOKな方はクリックして開いて下さい
この『フォードVSフェラーリ』は主人公が2人います。

1人はアメリカ人として初めて1959年にル・マン24時間レースで優勝したものの、心臓病を患いレーサーを引退し、スポーツカーの販売をしていた「キャロル・シェルビー」です。

彼は心臓病のためレーサーとしては活動できないので、今作『フォードVSフェラーリ』において、「フォード社」と開発現場の間に立つ「熱い中間管理職」として活躍します。

キャロルシェルビー

『フォードVSフェラーリ』公式ホームページより

そしてもう1人は、レーサーとしては凄腕なものの少年がそのまま大人になったような、よく言えばピュア、わるく言うと「周りが見えず、自分のことしか考えない」血の気の多い男である「ケン・マイルズ」です。

「ダークナイト」シリーズで、バッドマンを紳士な姿で演じた「クリスチャン・ベイル」が正反対のキャラクターである「ケン」というすぐキレる、でもピュアでカッコいい荒くれ者を見事に熱演しています。

ケンマイルズ

『フォードVSフェラーリ』公式ホームページより

この2人の主人公たちがお互いを認めつつ、時には殴り合いながら、デコボコバディとして、お堅い社風のフォードの経営役員幹部たちに横やりを入れられながらも「自分たちが作りたい理想の最速スポーツカー」を作り上げ、見事に1966年のル・マン24時間レースで勝利する「どんな逆境でも夢を諦めず挑戦し続ける熱い漢達による奇跡のサクセスストーリー」に仕上がっています。

「シェルビー」と「ケン」が殴り合う喧嘩シーンでも、「シェルビー」が地面に落ちてある缶で「ケン」を殴りそうになるのですが、サッと柔らかいパンに武器を持ち替えて殴ります。

「ほんとうは、尊敬しているお前を傷つけたくないんだよ」というメッセージがセリフではなく、細かな映画的な演出で語られているあたりもお見事と言わざる得ません。

 

「シェルビー」は、心臓病でレーサーとしての夢は諦めざる得なかったのですが、相棒である「ケン」をレーサーとして尊敬・信用し、フォード社からの打倒フェラーリの誘いを受け、自身のレーサーとしての夢を「ケン」に託そうとします。

ただし、「ケン」自身も自分の年齢が45歳を超えていること、人付き合いが不得意であることを自覚しているのもあり、レーサーとして活きる夢を半ば諦めかけていたので「シェルビー」の打倒フェラーリの誘いに葛藤します。

しかし、「ケン」の奥さんこと「モリー」が(おそらくなんでもない)買い物帰りの公道でカーレースさながらの暴走運転をしながら、「レーサーとして活躍したい」という気持ちに嘘をつかずに真っすぐに生きるように「ケン」の背中を半ば強引に押すシーンが引き金になり、「ケン」はフォード社のチームの一員としてル・マン24時間でフェラーリに勝つことを決心します。

ほんとうにココも名場面で、何度見ても感動して涙が溢れてきます。この好きになった男の夢を全力で応援する「モリー」さんも女性としてカッコいいんですよ。ほんと。

モリーマイルズ

『フォードVSフェラーリ』公式ホームページより

「私はアナタのどこに惚れたと思っているのよ!!」という愛と怒りが暴走運転に溢れていて、本当にジーンとくる男女の愛が凝縮された圧巻のシーンです。

さて、ご存知の方も多いかもしれませんが、「フォード」という自動車会社はベルトコンベア形式による自動車の大量生産システムを発明し、いわゆる「大衆車」を世界に広めた会社です。

持ち家があって、子供がいて、車も持っている・・・という「中流階級」という概念を作ったのも「フォード」といっても過言ではありません。

ただし、フォード車の販売が広がるにつれて、中流階級の中でも少し富裕な層や、若者たちからは「フォードとかみんな乗ってるしダサくね?」というイメージが出始めてしまい、フォードは「カッコいいスポーツカー」を作る必要が出てきました。

このため、当時経営難となっていた「フェラーリ」を買収をしてノウハウを得ようとしましたが、アメリカ企業に会社が買収されることに嫌悪したフェラーリに(映画上では)「デブの社長のもと、醜い会社で、醜い車を作っていろ。あの社長はしょせん2代目だ!」と罵倒され破談になります。

これに激怒したフォードの社長であるフェンリーフォード2世は、フェラーリがスポーツカーの絶対王者の証としているル・マン24時間レースで打ち負かす「カーレースによる戦争」を起こすことを決意します。

このフェンリーフォード2世を演じる「トレイシー・レッツ」の演技がまた素晴らしく、巨大資本企業のトップ経営者として冷静沈着でズッシリとした重厚な偉い人オーラを出しながらも、根底には「車好きの熱い血」が流れていることがにじみ出ているのが分かる名演には鳥肌物です。(高級ブランデーを飲んでいるシーンが出てきますが、車とフォードを愛しすぎているため、「ガソリンを飲んでいる」ようなメタファーにも見えます)

ヘンリーフォード2世

『フォードVSフェラーリ』公式ホームページより

『フォードVSフェラーリ』は、1959年の「シェルビーの米国人初のル・マンでの勝利」のプロローグから、1966年の「フォード社のル・マン24時間レースでの勝利」の7年間を描いているので、下手な作り方をするとダラダラ間延びした映画になってしまうところですが、ジェームズ・マンゴールド監督」の圧倒的な力量により、映画全体のテンポが良く、キャラクターの心理描写や迫力あるレースシーンはしっかり描きながらも、シーン間のカット割りは大胆に行っているので、153分に超密度の高いストーリーと熱量が詰め込まれていて「まさにレース映画だな~!」と思えるスピード感が序盤から保たれたままエンドロールまで突っ走るのも、この作品の素晴らしいポイントだと思います。

 

また、この『フォードVSフェラーリ』では、「サングラス」が1つの映画的モチーフとして使われています。

本心を隠したり、見たくないものに背を向けるとき、自身のモラルと格闘する際には「サングラス」をつけ、逆に本音を語る時、本心をさらけ出すときには「サングラス」を外すという、映画的なキャラクター心理描写がスマートで惚れ惚れするほど素敵です。

サングラスをかけたシェルビー

『フォードVSフェラーリ』公式ホームページより

また、一匹オオカミとして生きていた「ケン」が、ル・マン24時間レースの最終局面で「フォード社の商業的なコマーシャル」のために出した指示に従うかどうか・・という問いに対して「ケン」が自身のプライドとモラルと格闘した上で出した「彼なりの答え」にも、社会人としてズシンと心臓を打ち抜かれるような感動が待っています。

(ただし、実際の史実としては、「ケン」はフォード社の出した「この商業的な指示」に不満を持つことなく、むしろ協力的に動いていたそうです。また「シェルビー」も史実ではこの指示に関与していたようです。)

 

最後に、昨今マーティン・スコセッシ監督の「マーベル・シネマティック・ユニバース作品はシネマではない」との発言が映画界で物議になっていますが、本作『フォードVSフェラーリ』では、プロローグとエピローグで俳優のナレーションによる「観客に対する語り掛け技法」で映画が〆られています。

この技法こそ、まさにマーティン・スコセッシ監督の「グッドフェローズ」「ウルフオブウォールストリート」「アイリッシュマン」などで用いられている超一流監督ならではの映画的な伝統伎ですので、この映画『フォードVSフェラーリ』は巨匠視点で見ても間違いなく『シネマ』と言えるのではないでしょうか。

ル・マン24時間レースで、アメリカの車会社「フォード」が勝利する歴史を変えた瞬間を描いた映画ですが、同時にこの映画自体も「カーレース」の映画史を塗り替えるクオリティを秘めた超名作です。

ただの「カーレース」映画の領域を越えて、「熱い情熱を持った社員と中間管理職(現場)」VS「経営者(上層部)」という企業映画としての側面もキッチリ描かれています。

また、車に詳しくない方でも安心して見れるように、奥さん「モリー」や息子の「ピーター君」のラジオやTVを介した観戦による解説で、誰でも状況が理解しやすいように工夫がされています。

 

アメリカ映画と文化が好きの筆者は正直10点満点をつけたいクオリティではありますが、どうしてもアメリカ車会社「フォード」が始めてル・マン24時間レースで勝利したことを描いた作品なので、「アメリカ最高~!」という「アメリカ至上主義」を示すような映画にはなっていると思います。

このため、イタリアやフェラーリが好きな方がこの映画を見ると、「事実ではあるけど、ちょっとアメリカ側により過ぎた描き方になってない?」と感じてしまうのはあるだろうな~と思い、この点を配慮して、10点満点中9点評価と致しました。

 

とはいえ、映画は大好きだけど、車にそんなに興味がなかった筆者でも「車ってこんなにカッコよかったんだ!!なんか欲しくなってきた~!」と素直に思えるほどのパワーを持つ超名作です。

また、「カーレースによる戦争」を描いた作品なので、老若男女だれでも楽しめる作品に仕上がっています。

最近は『ジョーカー』や『アイリッシュマン』等の社会深度が濃く、ゴア表現が強い名作映画が多かったですが、『フォードVSフェラーリ』ならば小学生くらいのお子さんを連れて行っても安心な映画です。

(将来、免許とったあとに「スポーツカー欲しい!少しお金出して~!」ってなるかもしれないけどw)

 

ちなみに、この『フォードVSフェラーリ』は、一部背景を除いてすべて本物の車が使われているので、エンジン音やタイヤの音、クラッシュシーンの迫力が凄まじいです!

エンジン音を楽しむならば「IMAX」、レースの一体感と臨場感を味わうならば「4DX」が超オススメです。

筆者個人的にはル・マン24時間レース中に雨が降ってくるシーンや、クラッシュシーンの爆発による熱さが体感できるシーンがあるので、「4DX」推しです。

2020年1月10日公開映画ですが、いきなり「2020年は超面白い映画が沢山あるから、映画好きは期待してな!」と華麗に新年早々カマされた感じがします。

ほんとうに名作ですので、是非劇場で『フォードVSフェラーリ』をご鑑賞下さい。