劇場版『メイドインアビス 深き魂の黎明』評論!日本アニメらしい魅力がギュッと凝縮!

メイドインアビス評論

劇場版『メイドインアビス 深き魂の黎明』の10点満点評価

★★★★★★☆☆☆☆(6点)

もっと高得点を付けたいところですが、アニメ13話の完全続編である敷居の高さ、1回観ただけでは「度し難い」点、次のアニメ版への布石である点を配慮して、6点と厳しめの採点としました。しかし、「火の鳥」「デビルマン」「AKIRA」や「攻殻機動隊」「エヴァンゲリオン」などから脈々と伝わる日本アニメだからこそ出来る(ディズニーには出来ない)死生観や人間の尊厳を映し出した名作アニメ映画なのは間違いありません!

劇場版『メイドインアビス 深き魂の黎明』公式予告動画、およびストーリー概要

隅々まで探索されつくした世界に、唯一残された秘境の大穴『アビス』。
どこまで続くとも知れない深く巨大なその縦穴には、
奇妙奇怪な生物たちが生息し、
今の人類では作りえない貴重な遺物が眠っている。

「アビス」の不可思議に満ちた姿は人々を魅了し、冒険へと駆り立てた。
そうして幾度も大穴に挑戦する冒険者たちは、
次第に『探窟家』と呼ばれるようになっていった。

アビスの縁に築かれた街『オース』に暮らす孤児のリコは、
いつか母のような偉大な探窟家になり、アビスの謎を解き明かすことを夢見ていた。

ある日、母・ライザの白笛が発見されたことをきっかけに、
アビスの奥深くへ潜ることを決意するリコ。
リコに拾われた記憶喪失のロボット・レグも
自分の記憶を探しに一緒に行くことを決意する。

深界四層でタマウガチの毒に苦しむリコ。
リコを救ったのは成れ果てのナナチだった。
ナナチを仲間に加え、ボンドルドの待つ深界五層へと三人は冒険を進める。
そこで、プルシュカと名乗る女の子に出会い…

劇場版『メイドインアビス 深き魂の黎明』公式ホームページより引用

劇場版『メイドインアビス 深き魂の黎明』のポイント

良かった点

  • 3DフルCGアニメにはない2Dアニメならではの味わい深く、丁寧に書き込まれた作画に引き込まれる
  • カメラワークがとてもよく、幻想的な世界観を一望でき、まるで自分が探検をしているようなワクワク感が味わえる
  • 日本アニメに脈々と受け継がれている「死生観」「人間の尊厳」を考えさせられるアニメ作品になっている(ディズニーにはまねできない!)
  • 本編前のショートアニメにて、今作では登場しないキャラクターを描きファンサービスが行き届いている

気になった点

  • 完全にアニメ13話の続編であり、アニメ13話および漫画版を見ていない人は完全に置いていく「敷居の高い」作りになっている。
  • 「え!?そのパーツだけでそれ打てるの?」とやや主人公側によったご都合主義なシーンもある。

劇場版『メイドインアビス 深き魂の黎明』の感想

始めに書きますが、本作の劇場版『メイドインアビス 深き魂の黎明』はアニメ版「メイドインアビス」13話からの完全続編という立ち位置の劇場版となっています。

このため、アニメ版、ないし漫画版が好きな人をより「アビスの深淵」に呼び込む作品なので、この劇場版で新規ファンを獲得する・・・という点には「明確に背を向けた」作品と言っていいと思います。

アニメ版「メイドインアビス」はネット動画配信サービスで見れるので、劇場版『メイドインアビス 深き魂の黎明』を見る前には必ずアニメ版13話見てから臨みましょう!
ネタバレがOKな方はクリックして開いて下さい

手書きアニメーションならではの味がある描写

アニメ13話も含めてですが、この「メイドインアビス」はとにかく作画が丁寧で美しく、独特な中世ヨーロッパ風の市街と、アビスの中の幻想的な緑々しさ、何が起こるかわからない薄暗いおどろおどろしさがヒシヒシと伝わる味わい深さがあります。

とくに本作で「ハマシラマ」と呼ばれるイカのような生き物を生で食べるシーンがありますが、外国の方が「日本人がイカとかタコ食べるとか信じられね~!」という気持ちが存分に堪能できる愉快さが楽しめますw

ちなみに、筆者個人的には、アニメ版の頃からスクウェアエニックスのRPGゲーム「サガ・フロンティア2」の世界観に近い美しさがあるな~とみていました。

メイドインアビス続編イメージ

劇場版『メイドインアビス 深き魂の黎明』公式ホームページより

ライムスター宇多丸さんのラジオ「アフター6ジャンクション」の「アナと雪の女王2」リスナー評の中で、日本の現役女性アニメーターの方が「2Dアニメのエフェクトを持って、(ディズニーが作る3DフルCGアニメ作品に対して)日本のアニメーターのお前は何ができる?」と問いかけられて「答え」が出せずに悔し泣きしてしまった・・とおっしゃっていましたが、「いやいやいや!何をおっしゃる!この劇場版『メイドインアビス 深き魂の黎明』で、日本の2Dアニメだからこそ可能な味わい深さ・奥行きを存分に堪能できました!」と1人の映画ファンとしてコメント、応援させて頂きます。

特にディズニーの直近の「ライオン・キング」は、リアル過ぎて逆にキャラ(ライオン)の見分けが付かないし、リアルだからこそオスライオンに金〇ついてないのが気になるしで、決して3Dでリアル=良いというわけではないと思います。筆者はアニメ好きというより、映画好きですが、日本アニメ映画は素晴らしいと思いますよ!

日本アニメに脈々と伝わる「死生観」「人間の尊厳」の素晴らしい描写

これは日本アニメのお家芸と言っていいと思いますが、古くは「火の鳥」「デビルマン」、そして「AKIRA」「攻殻機動隊」、直近では「魔法少女まどか☆マギカ」などに脈々と受け継がれているゴア表現がとにかく濃い「死生観」と「人間の尊厳」を考えさせる強烈なパンチのあるストーリーと魅力が、この劇場版『メイドインアビス 深き魂の黎明』にも詰まっていると思います。

これこそディズニーでは作れない、日本アニメならではの「死生観」「人間の尊厳」を考えさせられるアニメーション作品なのではないかと思います。

そして、客寄せのための無意味なゴア表現ではなく、ちゃんとストーリー上必要不可欠な要素として「残酷なシーン」が描かれている点が素晴らしいと思います。

映画好きの方に伝えるとすると、直近だとマーティンスコセッシ監督の「アイリッシュマン」がPG12でしたので、あれを超えるレベルのゴア表現です。と伝えられるとブルッと来るのではないでしょうか。「家のペンキ塗り(隠語)」のシーンたっぷりです。

ただ、物語後半の戦闘シーンで、「レグ」の切り離された「あるパーツ」を使って別の人物が攻撃をしかけますが、原動力である「レグ本体」無しでそれって打てるの?ずるくない?と思わず突っ込んでしまいそうになるところはありましたw

筆者なりの本作 劇場版『メイドインアビス 深き魂の黎明』の解釈

既にネット上や「メイドインアビス」ファンの方の中では、「そりゃそうでしょ」ととっくの昔に結論に達している内容、もしくは見当違いかもしれませんが、私なりに映画ファン視点で今作の面白さを考察致します。

今作は一見すると「ボンドルド」の「リアリズム」が局地まで達して主人公「リコ」たちを苦しめるが、それを「リコ」たちが乗り越えて先に進むストーリーに見えますが、見返しているうちに別の解釈が浮かんできました。

それは、「ボンドルド」が誰よりも献身的で優しい「リコの支援者」なのではないか?という答えになります。

ボンドルド

劇場版『メイドインアビス 深き魂の黎明』公式ホームページより

初見で劇場版『メイドインアビス 深き魂の黎明』を見た時から、「ボンドルド」の割れた仮面から見えた瞳が「とても優しく、人間味がある温かさ」があるよう感じ、ひっかかっていました。

本作に置いて、アビスの6層以降に立ち向かうためには「白笛」の共鳴が必要となり、その「白笛」は「人間(人骨)」が原料であることが明らかになります。

また、共鳴の条件として「人骨」ならばなんでもOKというわけではなく、「6層以降にともに旅をしたいという想いを持った者」を材料として、「白笛」としなければならないことを、「ボンドルド」は予め知っていたので、「あるキャラクター」をリコ達と意図的に仲良くさせたうえで、凶行に及んだと解釈できます。

「ボンドルド」は、かつては、誰よりも優しい自己犠牲の精神が強い人物であったため、他者ではなく自分を「白笛」化し、特級遺物である「精神隷属機(ゾアホリック)」を用いて6層以降に挑もうと考えていたものの、「精神隷属機(ゾアホリック)」のデメリットとして層(力場)を跨ぐと精神を投影させられた者が壊れてしまうデメリットが分かり、自分以外の誰かに6層以降の探掘を託す他なくなってしまったと考察が可能です。

そして、「ボンドルド」は、「リコ」と力場の歪みが観察できる「ナナチ」ならば、6層以降の探掘が可能と見込んでいたため、物語序盤で「これからいらっしゃるのは、私にとってとても大切なお客様たちです」と発言していることや、最終局面でも「君たちがこの先(6層以降)にすすむことこそ、私の新たなる憧れです」と発言していることから、自身の夢、およびアビスの研究を進めるうえで、自分が持っている全てを献身的に「リコ達」に捧げて、支援したのではないかと考えられます。

映画アイコン
もちろん、のちに「ボンドルド」が6層以降を探索するにあたっての先行部隊として情報入手のために、リアリストとしての支援ともとらえることが可能です。

最初から本気で「リコ」たちを殺そうと思っていたならば、休憩部屋に置いておいた「行動食4号」に毒を盛っておけば、確実に殺せてますからね・・・w

ただし、「レグ」に関しては特級遺物であること、内に秘めた光があまりに危険(研究材料としても有益な事、リコにとって将来的に足枷になる可能性がある)と判断して、全力で排除しようとしていたと思います。

筆者は漫画版を見ていないので、「それ漫画版だとちゃんと描かれていたよ?」という内容かもしれませんが、私なりの本作劇場版『メイドインアビス 深き魂の黎明』の魅力についての解釈です。

ようするに「オーゼン」の「リコたち」に対するシゴキをより強烈にしたバージョンが本作にあたるのではないかと考えています。

本作は、「アビス」のごとく深くとても面白い作品なのですが、最低限アニメ13話を見てからでないと「度し難い」作品になっているので、面白さを味わうための敷居がとても高い作品だと思います。

また、アニメ版とそのまま直リンクしている点を考慮すると、マーベル・シネマティック・ユニバース映画と並ぶ「アッセンブル系の映像作品」なので、映画界の巨匠「マーティン・スコセッシ監督」で指すところの「シネマではない」判定に当たると思います。さらに、「ゴットファーザー」「地獄の黙示録」で知られるコッポラ監督だともっと厳しく「卑劣な作品だ!」と罵ってくるかもしれませんw

一方で、アニメ版をしっかり見てから、本作 劇場版『メイドインアビス 深き魂の黎明』を見ると、ほんとうに奥深い味わいがあって、端的にいえば「面白い」作品であることは間違いありません。

筆者は、巨匠監督たちの映画を観てシネマファンになった人間ですが、一方で「アベンジャーズ」を始めとした「アッセンブル系の映像作品」も好きなんですよね・・・w

本作 劇場版『メイドインアビス 深き魂の黎明』の面白さを味わい尽くすためには、最低限アニメ版13話の鑑賞が必要ですが、それだけの価値がある作品だと思います。

また、アニメ版のシリーズ続編制作も決定となりましたので、是非アニメ版13話を見てから、劇場版『メイドインアビス 深き魂の黎明』を劇場でご鑑賞下さい!