映画『ミッドサマー』の10点満点評価
★★★★★★(6点)

映画『ミッドサマー』公式予告動画、およびストーリー概要
家族を不慮の事故で失ったダニーは、大学で民俗学を研究する恋人や友人と共にスウェーデンの奥地で開かれる”90年に一度の祝祭”を訪れる。
美しい花々が咲き乱れ、太陽が沈まないその村は、優しい住人が陽気に歌い踊る楽園のように思えた。
しかし、次第に不穏な空気が漂い始め、ダニーの心はかき乱されていく。妄想、トラウマ、不安、恐怖……それは想像を絶する悪夢の始まりだった。
映画『ミッドサマー』のポイント
良かった点
- 白夜であるスウェーデンが舞台なので、「明るい舞台」で繰り広げられる惨劇により、通常のホラー映画とは違う恐怖感が味わえる
- 「浮気や不倫はダメ絶対!」と固く決心させてくれる道徳的な衝撃が待っている
- ドラッグをすすったときに見えるであろう光景が広がるので、「まさにドラッグムービー」と言える作品になっている
気になった点
- 北欧地域全体にネガティブイメージを与えかけない
- モザイク処理が中途半端で全裸シーンが「間抜け」に見える、また熊の剥製の着ぐるみも妙にチープで「間抜け」な絵面に笑ってしまいそうになる
映画『ミッドサマー』の感想
ホラー映画界の新星、かつ既に巨匠とよばれている「アリアスター」監督最新作、映画『ミッドサマー』の感想・評論です。
結論から書くと、明るい白夜でゴア表現強めの惨劇が繰り返されていくので、過去に味わったことが無いタイプの「ホラー映画」でした。
「我々の持っている倫理観」と、「土着の宗教の倫理観」のギャップを「ホラー」として描いている作品なので、モラルがグラグラと揺さぶられながら、恐怖を煽られます。

「明るい」という恐怖
本作『ミッドサマー』は白夜の「スウェーデン」の片田舎が舞台となるので、ホラー映画なのに太陽の光で満ち溢れ明るく、そして緑々しく、かつ花々に彩られた美しい背景がベースになります。
「明るい」がゆえに惨劇シーンでも一切の影が入らず「惨劇の形」が有体に姿を現してしまうので、下手なスプラッター映画よりも「ゴワ表現」が強烈です。
また、スウェーデン片田舎の「群衆」が行う「祝祭」により「惨劇」が行われていくというのが、絶妙でリアルな怖さがあります。
例えば、「プレデター」や「ジェイソン」と言った怪物や人物による殺戮ならば、彼らが登場したシーンで「何かが起こる」と予想できるのですが、本作『ミッドサマー』では、普段は穏やかで優しそうな村人、でも実は「土着の宗教(ペイガニズム)を崇拝する群衆」により「惨劇」が広がっていくので、いつ何が行われるか分からないという点が、とにかく本作のホラー感をより高めていると思います。

また、劇中「北欧地域のおとぎ話や神話を描いた古典的なタロットカードのような絵」が登場しますが、明らかにその後のストーリーを表す伏線となっていて、「絶対悪いことが起きるじゃん」と観客を悪い意味でリードしてくれるので、これらの絵が登場するたびに「恐怖というジェットコースターの坂を上っている」ような気分にさせられます。
そして、本作の核心に迫るネタバレとなるのでサラッと書きますが、ほんとうに怖いのは「土着の宗教を崇拝する田舎町の群衆」ではない・・・というのが本作の「ゾワッ」と鳥肌が立つほど恐ろしいホラー要素だと思います。

ドラッグ映画としての小気味悪さ
本作『ミッドサマー』では、主人公たちが躊躇なく「ドラッグ」を楽しむシーンが用意されています。
また、村人たちからも「錯乱」してしまうドラッグ成分の入った「何か」を提供され、半ば強制的に飲食させられてしまうこともあります。
結果として、自然豊かで美しいシーンなのに、草木や花々の揺れ方が妙であったり、草木が体と一体化して見えたりと、「ドラッギーな世界」に観客が誘われます。
また、これによって普段なら抵抗できたかもしれない「出来事」に対して抗うことが出来ず、村人たちの手のひらで踊らされるように「悪い方向」に転がり続けてしまいます。

北欧地域にネガティブなイメージを持ちかねない
筆者はサウナが大好きなので、いつか「北欧地域(フィンランド)」に旅行したいな~と考えていましたが、本作『ミッドサマー』を見ると北欧地域にどうしてもネガティブなイメージを持たされてしまいます。
明らかに空想の怪物が襲ってくるホラー映画ならば決してこのような感情は抱かないのですが、「北欧地域」はもともと「キリスト教の普及」が最も遅れた地域の1つとされているので、本作で描かれているような「地域に根付いた独自の宗教(ペイガニズム)」があっても不思議ではないというリアルさが、映画を観終わった後も余韻として残ってしまいます。
このため、最後にせめて「これはもちろんフィクションであり、実在する地域や物語を描いたものではありません」とメッセージを打ち出して欲しかったな~と感じます。
本作では一般人が「地域に根付いた宗教的価値観」により「惨劇」に巻き込まれてしまうので、「価値観の違い」では済まされないエリアにまでおびき寄せられてしまっています。
このため、一言「創作です」と言葉を添えて安心させて貰いたかったなーと思います。(なお、決して「地域に根付いた独自の宗教」を否定したり、「キリスト教」を絶対と言っているわけではありません。)

あと誰もが気になるポイントだと思いますが、本作では「裸体がお披露目されるシーン」がありますが、モザイクがかかっていたり・かかっていなかったり、シーンごとに中途半端なモザイク有無の「間抜け」さがあります。モザイク交じりの全裸で草原を走り逃げ回るシーンはホラーではなく、壮大なコメディに見えましたw

また、終盤「熊の毛皮で作った着ぐるみ」を「ある人物」が身に着けますが、カメラワークが悪いからか「チープなコント臭」が出ていて、思わず「プッ」と吹きそうになった自分がいました。
北欧地域の宗教的にヴァイキングやオーディンが「熊」を崇拝していたことを由来していることは分かるのですが、もうちょっと「怖い絵面」に出来なかったかな~とは感じました。

ポスターの明るい雰囲気だけ見ると、「お祭りで失恋でもして、女の子たちがワイワイしながら乗り越える楽しい映画かな~」と見えてしまいますが、『ミッドサマー』は疑う余地のない「ホラー映画」です。
何の情報なくパッと映画館に置いてあるポスターの雰囲気だけで『ミッドサマー』を鑑賞してしまい「うわ~!!」となった観客が世界中で続出していること間違いなしですw
明るい白夜が舞台なので、「惨劇」の形がクッキリ映りだされるため、ゴア表現が強烈です。
鑑賞するときには「十分な覚悟」をもって鑑賞することをオススメ致します!
