『パラサイト 半地下の家族』評論!アカデミー最高賞受賞の快挙の名映画!

映画『パラサイト 半地下の家族』評論

『パラサイト 半地下の家族』の10点満点評価

★★★★★★★★☆(8点)

簡単に日本人向けに面白さをお伝えするなら、アメコミ要素がない「ジョーカー」にドリフターズのお笑い要素を加えたような映画です。

『パラサイト 半地下の家族』公式予告動画、およびストーリー概要

過去に度々事業に失敗、計画性も仕事もないが楽天的な父キム・ギテク。そんな甲斐性なしの夫に強くあたる母チュンスク。
大学受験に落ち続け、若さも能力も持て余している息子ギウ。美大を目指すが上手くいかず、予備校に通うお金もない娘ギジョン…
しがない内職で日々を繋ぐ彼らは、“ 半地下住宅”で 暮らす貧しい4人家族だ。

“半地下”の家は、暮らしにくい。窓を開ければ、路上で散布される消毒剤が入ってくる。
電波が悪い。Wi-Fiも弱い。水圧が低いからトイレが家の一番高い位置に鎮座している。
家族全員、ただただ“普通の暮らし”がしたい。
「僕の代わりに家庭教師をしないか?」受験経験は豊富だが学歴のないギウは、ある時、エリート大学生の友人から留学中の代打を頼まれる。
“受験のプロ”のギウが向かった先は、IT企業の社長パク・ドンイク一家が暮らす高台の大豪邸だった——。

パク一家の心を掴んだギウは、続いて妹のギジョンを家庭教師として紹介する。
更に、妹のギジョンはある仕掛けをしていき…“
半地下住宅”で暮らすキム一家と、“ 高台の豪邸”で暮らすパク一家。
この相反する2つの家族が交差した先に、想像を遥かに超える衝撃の光景が広がっていく——。

『パラサイト 半地下の家族』公式HPより引用

『パラサイト 半地下の家族』のポイント

良かった点

  • 韓国だけにとどまらず、世界中で広がる格差社会の闇を深く考えさせられる
  • 「悪」に染まったとき、さらにそれを超える「悪」がすでに存在しているという戦慄が待っている
  • 貧民街を描いたシーンでも、カメラワークが美しく、とにかく各シーンごとの絵面の美しさに引き込まれる
  • 物語終盤までは、日本でいう「ドリフターズ」の「志村うしろ~!」的な緊張と笑いのシーンが散りばめられている

気になった点

  • ギウの友人であるエリート大学生のストーリーが未回収のまま終わってしまう
  • 良かった点の裏返しでもありますが、大豪邸にすむパク一家があまりに視野が狭くアホすぎるように見えてしまう

『パラサイト 半地下の家族』の感想

2019年から、格差社会の闇について深く考えさせられる名映画(「ジョーカー」や「アス」等)が同時多発的に公開されていますが、本作『パラサイト 半地下の家族』もそのラインナップに並ぶ、間違いなく名作と言える一本です。

トランプ政権がかかげている「白人至上主義」が根強く残っているアメリカでも、映画自体が大ヒットし、「米アカデミー賞の作品賞」「全米映画俳優組合賞」や「カンヌ国際映画祭」で最優秀賞を受賞したことは、本作「パラサイト 半地下の家族」に作品としての圧倒的な力があるからこその偉業だと思います。

若干のネタバレがOKな方はクリックして開いて下さい

カメラワークの美しさと脚本のウマさ

本作『パラサイト 半地下の家族』では、冒頭の貧民街を映し出すオープニングシーンから息をのむほど美しいシネマ的なカメラワークから映画が始まります。

投影しているのは、韓国の貧民街である「半地下の家」なのに、なぜかスクリーンを通して芸術的な美しさを感じるのは、監督「ポン・ジュノ」氏、および撮影担当の「ホン・ギョンピョ」氏のセンスに他ならないと思います。

もちろん、その後の映画全体を通して、スクリーンに映る全てのシーンが芸術的な美的感が溢れていて、見ていてとても心地よさを感じ、引き込まれるんですよね。

パラサイト 半地下の家族の1シーン『パラサイト 半地下の家族』公式ホームページより

また、日本では2020年1月3日から公開された「エクストリームジョブ」でもお見事でしたが、韓国映画は一見「公式の広告動画」や「ストーリー概要」を見ると、シンプルなストーリーに見えがちなのですが、実は複雑怪奇な話で、下手な脚本だとヒッチャカメッチャカな映画に仕上がってしまう危険性をはらんでいると思います。

しかし、本作『パラサイト 半地下の家族』でも複雑怪奇なストーリーを全く観客側が違和感を感じることなくついていくことができる脚本力のすばらしさこそ、韓国映画が世界中で絶賛される「原動力」なのではないかと考察しております。

物語中盤で、豪邸に住む少年「ダソン」君が1年前にお化けを見てトラウマをかかえている・・・というのがそっと伏線として撒かれている点が素晴らしい!

「悪」に手を染めるとき、すでにさらに強力な「悪」が存在する恐怖

本作の確信に迫る「ネタバレ」になってしまうので、あえてサラッと書きますが、幸せを手に入れるために悪事に手を染めていく「半地下に住むキム一家」ですが、すでに世の中にはもっと深い場所で「悪」が待っている・・・というのは本作の背筋が凍るほど恐ろしさと魅力だと思います。

映画「ジョーカー」も「(容疑者)ホアキン・フェニックス」の怪演もあって超名作でしたが、あの映画では「アーサー」が「ジョーカー」というヴィランになるまでのストーリーを描いた作品ですが、本作『パラサイト 半地下の家族』では、さらにその先の「悪」を描き出していることが、世界中で大絶賛されている理由だと思います。

半地下に住む主人公側である「キム一家」が貧乏ながら、ほどよい「品」が顔つきや言葉に現れていて、豪邸に住む「パク一家」が騙されるのも納得な絶妙な配役のバランス加減もウマい!と言わざる得ません。

「差別」や「軽蔑」によって「人間の尊厳」を傷つける危うさ

また、本作では半地下に住む「キム一家」が時折「ニオイ」を原因として、「差別」「軽蔑」されるシーンが含まれています。

ネタバレになってしまうので有体には書けませんが、この「差別」「軽蔑」こそ「人を激怒させる、許されない行為」であるという点も、本作では見事に描かれています。

日本の漫画界の巨匠「福本伸行」氏の「銀と金」における「神威家皆殺し編」において実行犯である「吉住 邦男」が死の直前に発言した「差別されたんだ・・・」というセリフが頭をよぎりました。

相手が「貧乏だから」「性別が違うから」「国が違うから」、平たく言えば「自分と違うから」といって「差別」や「軽蔑」することがいかに「人間の尊厳」を傷つけ怒りを煽る行為であるか猛省させられる「お説教」が本作『パラサイト 半地下の家族』を通して「ポン・ジュノ監督」から伝えられます。

ドリフターズ的な笑いこそ、原点にして最強?

本作では、物語終盤までは割と明るくポップなコメディ要素が多くなっています。

また、その笑いの質が、日本でいうところの「ドリフターズ的」なネタが多めで、「志村うしろ~!」に近い笑えるシーンがたっぷり入っています。

筆者は「ダウンタウン松本人志 信者」の一人ですが、日本の笑いはやや「ダウンタウン」の功績の影の部分でもある複雑で難しい笑いが「良し」とされる傾向があると思います。

(オカンが言うには、直近のm-1の結果等からしても、日本の笑いもシンプル化の方向に風向きが変わりつつあるらしいんやけど。)

ドリフターズ

『Amazon』の「ザ・ドリフターズ結成50周年記念 ドリフ大爆笑 DVD-BOX」より

世界中で大ヒットしている本作『パラサイト 半地下の家族』の「志村うしろー!」に近い、俗にいう「日本ではベタ」と言われてしまうような「ドリフターズ的な笑い」こそが、世界中で愛される「笑いの原点にして最強」だったのではないか?と改めて考えさせられました。

本作『パラサイト 半地下の家族』は、確かに物語終盤になるにつれ「ホラー要素」が強くなっては来ますが、映画全体でみると笑いに包まれたポップさと、「キム一家」の詐欺の手際の良さがあまりに見事で、「悪事」を見せられているのに、どこか痛烈な爽快感があるというバランスに仕上がっています。

『パラサイト 半地下の家族』を観た人から「あの映画は怖いよ~!」と脅されて、なかなか見に行く勇気が持てないという方もいらっしゃるかもしれませんが、大丈夫です!安心して下さい!

(・・・・終盤まではニヤリ)

韓国(アジア圏)映画でありながら、「米アカデミー賞」「全米映画俳優組合賞」や「カンヌ国際映画祭」で最優秀賞を取った偉大な映画です。その歴史に残る偉大な映画をリアルタイムで映画館で見れるチャンスです!是非劇場で『パラサイト 半地下の家族』をご鑑賞下さい。